【レポート】2016年5月14日「ゴッホの手紙」@MuseumCafé茶花

 

2016年5月14日(土)沖縄県立博物館・美術館3FのMuseumCafé茶花にて「ゴッホの手紙」(太陽の絵筆~ゴッホのIMG_3497生涯と作品~)が開催されました。これは、6月に開催される絵画展「ゴッホ、モネ、セザンヌ~巨匠たちの奇跡~」に関連した企画として、また「一般社団法人おきなわ芸術文化の箱」が2016年度に連続企画として企画している「街なかリーディング」企画の第1弾として、通常の劇場空間ではない空間で、飲食をともにしながら、演劇を鑑賞してもらおうという企画です。

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「劇艶おとな団」の主宰であり、俳優である当山彰一がゴッホに扮し、37枚のスライドで表示されるゴッホの代表的な絵画作品や、詩、時代を区分するテーマにあわせて、現存する860通のゴッホが家族にあてた手紙を数十点リーディングし、ゴッホが生きた時代や、ゴッホの内面、創造的な技法への取り組み、また絵画作品を描いた時期にゴッホが考えていたことを探っていくという試みでした。

 

さらに、このリーディングを劇的なものにするために、ゴッホが生きていた時代にパリでIMG_3503作曲されたサティとマスネ―、ドビュッシーなど名曲の数々を、琉球フィルハーモニックのバイオリン(金城由希子)とピアノ(上原玲子)の生演奏で奏でることで、ゴッホの心情や、時代背景を同時に追体験していくという構成となっています。

通常の喫茶店営業とは異なるレイアウトの空間で、劇が始まる前からワインやビールを飲みながら談笑する観客は、劇への期待とリラックスした黄昏時の空間を楽しみ、一転、演奏が始まりゴッホが登場するや否や、30分ほどの濃縮された時間をそれぞれの思いをもって、ゴッホの言葉を聞き、演奏から内面を想像し、これまでとは違った視点でスライドの絵画作品を堪能したように思います。

ゴッホが最後に投函することなく胸ポケットにしまった手紙と、その後、部屋を出て自殺に至る場面では、夢見るように駆け抜けたゴッホの人生を惜しむかのような静寂と余韻が生まれ、その後の終演時には、スタンディングオベーションを伴う万雷の拍手で、俳優と演奏者をたたえる時間となりました。

 

終演後には、美術館副館長である前田比呂也による、ゴッホの生涯の解説が30分ほど行われました。

そこでは、ゴIMG_3555ッホの絵画に描かれた植物が、主にゴッホが入院していた精神病院の中庭で描かれたこと、自らを象徴するものを作品に描きこみ、のちにそれを消したことの理由など、絵画の創作背景の解説が行われました。

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ゴッホの人生には、ゴッホの恋愛や共同体への激しい希求と芸術への希望、そして挫折のみならず、その手紙の送り先であり、生涯、ゴッホの創作活動を支え続けた弟のテオ、また、ゴッホの死後、半年という短さで亡くなったテオの遺志を継ぎ、ゴッホの絵画作品をすべて保管し、その後の25年間、ふたりの間に交わされた手紙を集め、書簡集を刊行することでゴッホ作品に光を当てたテオの妻、ヨハンナという関係が語られることで、なによりもゴッホを等身大の身近な存在としてとらえなおす機会となったのではないでしょうか。

(公演詳細)

日時:2016年5月14日(土)18:00~
会場:沖縄県立博物館・美術館3F Museum Café 茶花

キュレーター解説:
前田比呂也(美術館副館長)

ゴッホの手紙リーディング:
当山彰一(劇艶おとな団)

演奏:琉球フィルハーモニック「バイオリン&ピアノ」
バイオリン:金城由希子
ピアノ:上原玲子

構成演出:
当山彰一(おきなわ芸術文化の箱)

                                                          レポート文責:川口聡